「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載28】

老後生活費の管理と支出の最適化
目次
定年後の生活では、現役時代とは違って収入の大半が年金に限られ、毎月の出費が家計を圧迫するようになります。
ゆとりある老後生活を送るには、「どれくらい支出があるのか」「どこを見直すべきか」を把握し、家計の“最適化”を意識した生活設計が欠かせません。
この項では、老後における生活費の実態と、支出を効率的に管理するための工夫を紹介します。
◆ 老後の生活費はいくら必要?
総務省「家計調査(高齢夫婦無職世帯)」によると、夫婦2人の月間平均支出は以下の通りです。
支出項目 | 月平均 |
食費 | 約6.5万円 |
住居 | 約1.4万円(持ち家の場合) |
光熱・水道 | 約2.0万円 |
保健医療 | 約1.7万円 |
交際費 | 約2.5万円 |
娯楽費 | 約2.0万円 |
その他(交通、衣服など) | 約5.0万円 |
合計 | 約21〜23万円程度 |
▶ 年金収入が月20万円未満である場合、月々の赤字を補う手段を持っているかどうかが重要です。
◆ 支出を減らすだけでなく「見直す」ことが大切
節約は大事ですが、無理な切り詰めは生活の質を下げ、ストレスにもつながります。
大切なのは「不要な支出を減らし、価値のある支出にお金を使う」ことです。
▸ 見直しのポイント:
- 保険料:退職後に不要となった民間保険を整理(医療保険・死亡保険)
- 通信費:格安スマホ・ネット回線の見直し
- サブスク契約:利用頻度の低いサービスは解約
- クレジットカード:年会費のかかるカードは集約・解約
▶ 毎月5,000円の見直しでも、年間6万円、10年で60万円の節約効果になります。
◆ 生活コストを抑える工夫と支援制度の活用
老後の家計では、民間の工夫と公的制度の併用が節約のカギとなります。
▸ 生活費を抑える工夫:
- 地域の高齢者割引・公共施設の利用(映画館、交通機関など)
- 自宅での家庭菜園・調理による食費節約
- 買い物やレジャーは“平日割”を活用
▸ 公的支援制度の活用:
- 高額療養費制度(医療費の上限設定)
- 介護保険サービス(訪問・通所・福祉用具)
- 地方自治体の生活支援サービス(ごみ出し支援、配食など)
◆ 予算管理の習慣を持つ:家計簿の活用
収支の「見える化」は、無意識の支出を防ぎます。
最近では高齢者でも使いやすい家計簿アプリ(「Zaim」「マネーフォワード ME」など)も登場しています。
▸ 管理のコツ:
- 支出を3分類(固定費・変動費・特別費)に分けて管理
- 月初に予算を立て、週単位で残高を確認
- 現金派の方は「袋分け家計簿」でもOK
◆ まとめ:「収入に合わせて暮らす」が老後家計の基本
老後の家計管理においては、「増やす」よりも「減らしすぎない」工夫が大切です。
無理なく、楽しみを残しつつ、支出のコントロールを習慣化することが資産寿命の延伸に直結します。
「安心して使える範囲内で、心豊かな生活を送る」ために、今から家計の見直しと生活設計を始めましょう。