「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載25】

第6章:定年退職・老後(60歳以降)

長年にわたる仕事や子育てを終え、いよいよ「自分自身の時間」としての人生が始まる60歳以降のライフステージ。定年退職を迎えるこの時期は、働く日々から退くという大きな転機であり、経済的にも生活スタイルにも大きな変化が訪れます

一方で、「年金だけで生活できるのか?」「貯金は足りる?」「医療費や介護費用はどれくらいかかるのか?」といった老後の不安も現実味を帯びてきます。

この章では、老後の生活資金の見通しと管理、年金の受け取り方、退職金の活用法、医療・介護・相続への備え方など、60歳以降の人生を安心して過ごすためのファイナンシャル・プランニングを具体的に解説します。

老後を「不安な余生」ではなく「安心して楽しめる時間」へと変えるために、今からでもできることは数多くあります。
人生100年時代を見据え、自分らしく生きるための「経済的土台」をこの章で築いていきましょう。

リタイアメントプランと資産の守り方

定年退職を迎えたあとの人生は、経済的にも精神的にも「守りのフェーズ」に入ります。働き盛りの時期とは異なり、毎月安定して入ってくる収入は年金中心となり、資産を減らさずに生活していくことが大きな課題となります。

ここで求められるのは、「いかに資産を長持ちさせるか」「どのように取り崩すか」というリタイアメントプランの再設計です。退職金、年金、貯蓄、投資、保険──これまで築いてきた資産を、無理なく・無駄なく・安全に活かしていく戦略が必要です。

また、高齢期には病気や介護、住み替え、相続といった新たな課題も現れます。これらに備えるためには、「お金を増やす」よりも「お金を守る」意識がより重要になってきます。

このセクションでは、以下のテーマに沿って、老後の暮らしを経済的に安定させるための知識と実践法を紹介していきます:

  • 年金制度の仕組みと受け取り方の工夫
  • 退職金の賢い使い方と取り崩しの順序
  • 老後生活費の管理と支出の最適化
  • 医療・介護に備える資金計画と保険の活用
  • 認知症・相続・終活に向けた事前準備

これらを総合的に理解し、自分なりのリタイアメントプランを構築することで、「お金の不安に悩まされる老後」から、「安心して暮らせる豊かな老後」への転換が可能になります。

それでは、老後生活の基盤となる年金・資産の管理術から見ていきましょう。