「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載24】

介護の準備と親の資産管理
目次
40〜60代は、「子育てが一段落したと思ったら、今度は親の介護が始まった」という“ダブルケア”の時期に突入します。
高齢の親が突然倒れたり、認知症を発症したりしたときに、「何も準備していなかった」という声は非常に多く、精神的・経済的な負担が一気に家庭にのしかかることもあります。
また、介護と切っても切れないのが「お金」と「親の資産管理」の問題です。
本項では、介護への備えと親の財産管理について、事前に押さえておくべき実務を紹介します。
◆ 介護が始まるタイミングと費用の現実
親が要介護状態になるタイミングは突然訪れます。病気や転倒などで入院・在宅介護が始まると、介護にかかるコストと時間は想像以上に大きくなるのが現実です。
▸ 介護費用の目安(厚生労働省調査より):
- 月額費用:平均7〜15万円(施設/在宅による)
- 介護期間:平均約5年
- トータル費用:500万〜1,000万円前後
公的介護保険制度を活用することで一部自己負担(原則1〜3割)となりますが、住宅改修、紙おむつ、通院介助など保険外の支出が家計を圧迫します。
◆ 公的制度と介護保険の理解が備えの第一歩
介護は、制度を知っているかどうかで経済的負担が大きく変わる分野です。
▸ 主な公的支援制度
- 要介護認定(市区町村):介護度に応じてサービス量が決定
- 介護保険サービス:訪問介護、通所デイサービス、ショートステイなど
- 高額介護サービス費制度:一定額を超えた場合に払い戻し
▶ 要介護認定は申請しなければ始まらないため、親の様子に変化を感じたら、早めに地域包括支援センターへ相談を。
◆ 親の資産管理:認知症になる前に「準備しておくべきこと」
親が認知症になると、預金の引き出しや契約手続きが一切できなくなるケースが多く、子どもがいくら事情を知っていても、法的な権限がなければ対応ができません。
▸ 想定されるトラブル例:
- 親の口座が凍結され、介護費用の支払いができない
- 認知症の親名義の不動産が売却・賃貸できない
- 病院の手術同意などが子ども単独で行えない
◆ 親の資産を安全に管理する方法
▸ ① 家族信託(民事信託)
- 親の財産を子どもが「信託財産」として管理・運用・処分できる」制度
- 財産の凍結リスクを防げる
- 信託契約は専門家(司法書士・弁護士)に相談
▸ ② 任意後見契約
- 元気なうちに将来の後見人をあらかじめ指定しておく制度
- 公証役場で契約を結ぶ必要あり
- 発動は「判断能力が低下したとき」に限定される
▸ ③ 財産の見える化
- 通帳・保険・不動産・借入金などを一覧にしておく
- 家族内で「いざというとき誰が何を把握しているか」を明確にしておく
◆ 介護とお金は“家族全体の問題”
親の老後の備えを親任せにしていると、いざというときに子世代が対応できず、結果的にすべてを肩代わりすることにもなりかねません。
介護も資産管理も、「親のこと」ではなく「家族全体の未来を守るための対話」として、早めに話し合いを持つことが最大の予防策となります。
◆ まとめ:介護も資産管理も「元気なうちに始める」のが鉄則
介護と資産管理は、親が健康なうちにこそ準備しておくべきライフプランの一部です。
親の「ありがとう」を引き出せる準備を、早めに始めておきましょう。