「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載19】

出産・育児にかかるお金と政府支援制度

「子どもを持ちたい」と考える一方で、「育てるのにどれだけお金がかかるのか不安」という声は少なくありません。出産にはまとまった費用がかかり、育児も年々支出が増えていきます。

しかし、日本には出産・育児を支える公的制度が数多く用意されており、正しく活用することで家計の負担を大幅に軽減することが可能です。

この項では、出産〜乳幼児期にかけて必要な費用と、主要な政府支援制度をわかりやすく整理します。


◆ 出産にかかる費用の相場

出産にかかる費用は、分娩方法や医療機関によって異なりますが、全国平均で約50万円前後とされています(厚生労働省「出産育児一時金制度調査」より)。

項目費用の目安
分娩・入院費用約45万〜55万円
健診・通院費用(妊婦健診14回)約10万円(助成あり)
ベビー用品・準備費用約10万〜20万円

◆ 育児にかかる主な費用(0〜3歳)

項目月額の目安
オムツ・ミルクなどの日用品1〜1.5万円
衣類・医療費・衛生用品5,000〜1万円
保育料(認可保育園)所得により異なる(無償化対象もあり)

育児費用は日常的に発生する支出が中心で、特にミルク・オムツ・衣類の頻繁な買い替えが家計に響きます。


◆ 主な政府支援制度と内容

▸ 出産育児一時金(健康保険法 第99条)

  • 出産1児につき 原則50万円(産科医療補償制度加入施設)
  • 直接支払制度で医療機関へ支払いされ、実質的に手元負担は軽減
  • 健康保険の加入者・被扶養者が対象

▸ 妊婦健診の公費助成(母子保健法)

  • 妊婦健診14回分程度を各自治体が助成
  • 自己負担が1〜2万円程度に抑えられるケースが多い

▸ 児童手当(児童手当法)

  • 支給額(月額):
    • 0〜3歳未満:15,000円
    • 3歳〜小学校修了前:10,000円(第3子以降は15,000円)
    • 中学生:10,000円
  • 支給は年3回(4・6・10月)
  • 所得制限あり(扶養人数に応じて限度額が異なる)

▸ 幼児教育・保育の無償化(子ども・子育て支援法)

  • 3〜5歳の全ての子ども、および0〜2歳の住民税非課税世帯が対象
  • 認可保育所・幼稚園などの保育料が実質無償

▸ 乳幼児医療費助成(自治体独自)

  • 医療費が無料または1回数百円の定額負担
  • 対象年齢や内容は市区町村ごとに異なるため、自治体の窓口で確認を

▸ 出産手当金(出産前後の休業補償)

  • 勤務先の健康保険に加入し、産休中に給与が支払われない場合に支給
  • 金額は「日給の2/3 × 日数」
  • 支給期間:出産予定日の42日前〜出産後56日まで

◆ 出産・育児と「タイミング」の大切さ

これらの制度は申請期限や必要書類が決まっているものが多く、手続きが遅れると受け取れない可能性もあります。

たとえば:

  • 児童手当は、出生後15日以内に申請が必要
  • 出産育児一時金の直接支払制度は、出産前に同意書の提出が必要

出産を迎える前から、夫婦で支援制度を調べておき、役割分担をしておくことが賢明です。


◆ まとめ:支援制度を知ることが最大の「育児コスト削減」

出産・育児は確かにお金がかかりますが、政府や自治体の支援制度を最大限に活用することで、負担は大きく軽減できます。

「知らなかった」「申請しそびれた」で数十万円の損をすることもあるため、早い段階で必要な制度と手続きを整理し、安心して子どもを迎えられる体制を整えておきましょう。