「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載16】

第4章:社会人・結婚・子育て(25〜40歳)
目次
25歳から40歳にかけての時期は、社会人としてのキャリアが本格化し、結婚、住宅購入、出産・育児など、人生の大きなライフイベントが集中する時期です。
これまで「自分の生活をどう成り立たせるか」だった金銭管理は、「家族を支えるために、いかに計画的に資産を構築していくか」というステージへと進化します。
収入が増える一方で、教育資金、住宅ローン、保険、介護の備えなど、出費も複雑かつ長期的な視点が必要になります。将来を見据えた堅実な資金計画が、家族の安心とゆとりある生活の鍵を握るのです。
本章では、次のようなテーマに沿って、社会人から親世代へと変化していく中で求められるファイナンシャル・プランニングを解説します:
- 給与の管理と貯蓄の最適化
- 結婚・出産・育児にかかるリアルな費用と支援制度
- 住宅購入の判断と資金計画
- 保険の見直しとリスクマネジメント
- 将来の教育資金と老後資金の両立戦略
「家族のために、今、何を備えておくべきか?」という問いに向き合うこの時期。人生でもっとも“お金の選択”が重要になる年代で、後悔しない決断ができるよう、しっかりと計画を立てていきましょう。
🔹ライフイベントごとの資金計画
給与管理と家計の黄金比
社会人として働き始め、経験を積むにつれて、年収やボーナスの額も少しずつ増えていく時期になります。しかし、収入が増えたからといって、自動的に貯金が増えるわけではないのが現実です。
「いつの間にかお金が貯まらない」「家計のバランスが崩れている気がする」——そんな悩みの背景には、給与の使い方を見直さずに生活水準を上げてしまう“生活費の膨張”があります。
この項では、収入を無理なく管理し、安定した家計を維持するための考え方と、家計の「黄金比」と呼ばれる理想的な支出配分を紹介します。
◆ 給与管理の基本は「固定費」と「変動費」の区別から
給与を手にしたら、まず重要なのが「お金の流れを見える化すること」です。そのためには、支出を大きく2つに分けて管理することが基本です。
種別 | 内容 | 例 |
固定費 | 毎月一定額かかる支出 | 家賃、住宅ローン、保険料、通信費、サブスクなど |
変動費 | 月によって変わる支出 | 食費、光熱費、外食、交際費、交通費、子ども関連費 |
固定費は家計に占める割合が大きく、一度見直せば効果が長く続くため、最優先でチェックすべき項目です。特に保険や通信費、住居費は、契約を見直すだけで年間数十万円の節約につながることもあります。
◆ 家計の「黄金比」を参考にバランスを整える
「どれくらいの割合で支出を配分するのが理想なのか?」
そんな疑問に答えるのが、家計の黄金比(手取りベース)と呼ばれる考え方です。これは、家庭のライフステージに応じて理想的とされる家計の支出バランスを示したものです。
▸ 夫婦+子ども1人(30代)モデルの例:手取り30万円の場合
項目 | 割合 | 月額(目安) | コメント |
住居費 | 25% | 75,000円 | 家賃または住宅ローン |
食費 | 15% | 45,000円 | 外食込み |
水道光熱費 | 5% | 15,000円 | 季節変動に注意 |
通信費 | 4% | 12,000円 | 格安プランの活用で圧縮可 |
保険料 | 5% | 15,000円 | 生命保険・医療保険など |
教育費 | 5% | 15,000円 | 保育料、習い事など |
日用品・雑費 | 4% | 12,000円 | 生活必需品や衣服代 |
交通費 | 3% | 9,000円 | 車保有時は別枠で考慮 |
小遣い(夫婦) | 10% | 30,000円 | 交際費含む |
貯蓄・投資 | 15% | 45,000円 | つみたてNISAやiDeCoなどに充てる |
このバランスをベースに、各家庭の事情に応じて「住居費を抑えて教育費に回す」「貯蓄割合を優先」など、カスタマイズしていくのが理想的です。
◆ 支出は「先取り貯蓄」でコントロール
貯金を後回しにすると、どうしても使ってしまいがちです。おすすめは、「先取り貯蓄」という考え方。
- 給与が入ったら、先に貯蓄額(たとえば15%)を別口座に移す
- 残ったお金で生活する
この仕組みを自動化すれば、無意識のうちに資産が増えていきます。また、ボーナス時にも一定割合を貯蓄に回す習慣をつけておくと、教育資金や老後資金にも備えやすくなります。
◆ まとめ:増える収入を「使い方」で味方にする
25歳以降は収入が安定・増加していく一方、支出の責任も増す時期です。
だからこそ、「今月いくら使ったか」ではなく、「収入をどう活かすか」という視点で家計を見直すことが重要です。黄金比を参考に、使うべきところには使い、未来のためには確実に貯める。
堅実な給与管理が、家族の安心と将来の選択肢を広げる土台になります。