「自己都合退職」と「解雇」の違いとは?―労働法からみた基礎知識


「自己都合退職」と「解雇」の違いとは?―労働法からみた基礎知識

はじめに

会社を退職する際には、「自己都合退職」か「解雇」かという大きな分かれ道があります。実はこの違い、退職後の生活や法的な扱いに大きな影響を与えるのです。本コラムでは、労働基準法や関連法令に基づいて、それぞれの違いをわかりやすく解説します。


1.自己都合退職とは

定義

自己都合退職とは、労働者自身の意思で会社を辞めることを指します。病気、家庭の事情、転職希望など理由はさまざまですが、重要なのは「労働者側から申し出る」という点です。

関連法令

  • 労働基準法第6条(強制労働の禁止): 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働させてはならない。
    → 労働者には退職の自由があります。
  • 民法第627条: 期間の定めのない雇用は、当事者の一方がいつでも解約の申入れをすることができ、申入れから2週間で終了します。

実務上のポイント

  • 退職の申し出は原則として自由
  • 通常は退職願を提出し、会社の了承を得て退職手続きを進めます
  • 失業給付の受給開始まで**待機期間(7日間)+給付制限(原則2〜3か月)**が課せられます

2.解雇とは

定義

解雇は、使用者(会社)側が労働契約を一方的に終了させることです。これは、労働者に非がある場合(懲戒解雇)や経営上の理由(整理解雇)などが該当します。

関連法令

  • 労働契約法第16条: 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。
  • 労働基準法第20条(解雇予告): 解雇する場合は、原則として少なくとも30日前に予告、または30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

実務上のポイント

  • 合理的な理由と社会的相当性が必要
  • 解雇予告義務を怠ると違法となる可能性
  • 労働者は即時に失業給付を受けられる(待機期間のみ)

3.退職理由の違いがもたらす影響

項目自己都合退職解雇
離職理由労働者自身会社側
失業保険給付給付制限あり給付制限なし(原則)
再就職支援会社の義務なし会社に支援義務がある場合あり(希望退職など)
書類上の扱い自主退職会社都合退職として記録される
トラブル対応原則自己責任不当解雇の争いが可能

4.注意すべきポイントとトラブル回避のコツ

  • 会社から「自己都合にして」と言われたら注意!
    実質的に解雇であれば、「会社都合退職」として記録されるべきです。雇用保険受給や将来の履歴に影響するため、納得いかない場合はハローワークや労働基準監督署に相談を。
  • 解雇通知は必ず書面で受け取る
    解雇理由証明書(労基法第22条)を請求できる権利があります。

まとめ

退職には「自己都合」と「解雇」があり、それぞれに法的根拠と実務上の影響があります。会社とトラブルにならないように、また不利益を被らないように、法令に基づいた正しい知識を持っておくことが重要です。


参考法令:

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 民法
  • 雇用保険法