「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載11】

大学・専門学校・就職(18〜25歳)
目次
高校を卒業し、いよいよ大人への第一歩を踏み出す18〜25歳の時期。この年代は、進学、就職、一人暮らし、アルバイト、奨学金の利用、社会人としての収入獲得など、人生の中でもっとも多くの「選択」と「変化」が重なる時期です。
大学や専門学校への進学では、数百万円単位の学費や生活費がかかり、多くの学生が奨学金やアルバイト収入に頼ることになります。また、就職すれば初めての給与を手にし、自分自身でお金を管理していく責任が生まれます。
このような背景のもと、この時期に身につける金銭感覚やファイナンシャル・リテラシーは、一生の資産管理の基礎となります。逆に言えば、「ここでの失敗がその後の人生に長く影響する」こともあるのです。
本章では、以下のようなテーマを軸に、進学・就職期におけるファイナンシャル・プランニングの実践方法を具体的に解説します:
- 進学にかかる学費と奨学金の基礎知識
- アルバイト収入と生活費のバランス管理
- クレジットカードや信用情報の正しい扱い方
- 初めての貯蓄・投資・保険加入の考え方
- 就職後の家計設計と給与明細の読み方
親からの支援が減り、自分自身でお金のすべてを管理する「経済的自立」へのステップとなるこの時期。後悔しない選択をするために、正しい知識と計画的な行動が求められます。
それでは、進学・就職を経て社会人へと向かうこの大切なステージにおける、お金との付き合い方を学んでいきましょう。
自立に向けたファイナンシャル・プランニング
18歳を迎えると、人生はいよいよ「自分で選び、責任を持って生きる」段階に入ります。進学するのか、就職するのか、実家を出て一人暮らしを始めるのか。それぞれの選択に、自由と引き換えに「お金の責任」が伴います。
この時期に大切なのは、「経済的自立」に向けた基礎的なファイナンシャル・プランニングを身につけることです。進学・就職いずれの場合でも、自分で収入と支出を把握し、将来を見据えて資金を管理する力が求められます。
◆ なぜ「お金の計画」が必要なのか?
大学・専門学校への進学には、学費、入学金、教科書代、交通費、生活費などの大きな支出が発生します。これらを自己資金だけで賄える学生は多くなく、多くが奨学金やアルバイト収入を活用しています。しかし、無計画な借入や支出が重なれば、卒業後に数百万円の負債を抱えることになりかねません。
一方、就職して収入を得るようになっても、住居費、食費、光熱費、社会保険料、税金などの日々の生活コストを自分でコントロールする必要が出てきます。さらに、将来の結婚、出産、転職や留学などのライフイベントに備えた資金準備も始めていく時期です。
つまり、「自立=収入を得ること」ではなく、「収支を管理して将来を設計できること」こそが真の意味での自立なのです。
◆ この時期に身につけたい3つの習慣
- 家計簿やアプリで「お金の流れを見える化」する習慣
→ 月にいくら使っているのか、固定費と変動費のバランスを把握しましょう。 - 「収入<支出」にならないように意識する習慣
→ 生活費は収入の範囲内でやりくりし、急な出費に備えた予備費(生活防衛資金)を確保します。 - 「貯める・備える・増やす」の3ステップを意識する習慣
→ 貯蓄をしたうえで、必要に応じて保険や少額投資(つみたてNISAなど)も検討しましょう。
◆ ファイナンシャル・プランニングの5つの視点(初級編)
この年代で意識すべき基本的な視点は、次の5つです:
視点 | 内容 |
収入 | アルバイト・奨学金・給与など収入源を把握する |
支出 | 固定費(家賃、通信費)と変動費(食費、交際費)を区別する |
貯蓄 | 目標をもった貯金を継続し、急な出費に備える |
信用 | クレジットカードやローンの使い方を学び、信用情報を守る |
保障 | 最低限の保険(学生向け・新社会人向け)を検討する |
これらを意識することで、将来の不安を減らし、自信を持って日々の選択ができるようになります。
◆ 人生の土台づくりは、今から始まる
18〜25歳は、社会に出る準備をし、自分自身の「人生の土台」を築いていく最も重要な時期です。ここでファイナンシャル・プランニングの基本を身につけておくことで、将来の選択肢が広がり、「お金に振り回されない人生」を手に入れることができます。
たとえ収入がまだ少なくても、「収入の中で生活し、貯め、備える」という意識づけができているかどうかが、将来の安心と自由を大きく左右します。
この章では、実際の進学・生活・就職に即したファイナンシャル・プランの立て方を具体的に解説していきます。あなたの自立を支える一歩として、ぜひ役立ててください。