「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載10】

将来の進学を見据えた中長期的な資金計画

子どもの将来を考えるうえで、「進学費用」は避けて通れないテーマです。中学・高校・大学と進むにつれて、教育費は右肩上がりに増加します。特に大学進学時には、年間100万円を超える支出が必要になるケースも少なくありません。

このような大きな支出に備えるためには、早期からの中長期的な資金計画が不可欠です。この項では、教育費の全体像と、計画的に準備するための手段について解説します。


◆ 進学にかかる主な費用の目安

文部科学省「令和3年度 学校基本調査」および「私立大学等の授業料等の調査結果」によれば、進学にかかる年間の平均費用は以下の通りです。

学校種別授業料等(年額)入学金備考
公立高校約12万円数万円授業料の一部は就学支援金制度あり
私立高校約40万円約10万円学費支援制度の対象
国公立大学約54万円約28万円初年度約82万円が目安
私立文系大学約80万円約25万円初年度約105万円程度
私立理系大学約120万円約25万円初年度約145万円程度

上記はあくまで学費のみの目安であり、通学費や教材費、一人暮らしであれば生活費も加わるため、4年間で数百万円規模の資金が必要となります。


◆ 資金計画は「時間」と「目標金額」で考える

進学費用は、「いつ・どれだけ必要になるか」が予測できる数少ないライフイベントの一つです。だからこそ、以下の2点を明確にすることが資金計画の第一歩となります。

  1. 進学時期(必要になる年)
  2. 進学先ごとの目標金額

たとえば、「18歳で私立大学理系に進学予定」であれば、高校入学までに300万円程度の準備を目標にするとよいでしょう。さらに、奨学金や教育ローンの活用可能性も検討しながら、現実的な資金繰りを考えます。


◆ 中長期的な準備に活用したい金融商品

▸ 学資保険

  • 子どもの教育資金専用の貯蓄型保険
  • 契約者(親)に万が一のことがあっても保険金が支払われる
  • 10年〜18年など長期契約向き

▸ NISAつみたて投資枠(2024年以降の新NISA)

  • 少額からの長期・積立・分散投資に最適
  • 非課税期間が無期限化され、教育資金の形成に向いた制度に
  • インデックスファンドなどを利用し、中長期の資産形成が可能

▸ 定期預金・普通預金

  • 安定性は高いが金利が非常に低いため、インフレへの備えとしてはやや弱い
  • ただし「絶対に元本を減らしたくない」場合は選択肢となる

◆ 無理のない積立額を設定するコツ

毎月の積立額を設定する際は、「いつまでに、いくら必要か」を逆算して考えます。

例:18歳時に300万円必要 → 0歳から積立する場合
→ 18年間で毎月約13,900円を積み立てれば到達可能(利息等は考慮せず)

積立は早く始めるほど少額で済み、複利の効果も期待できるため、可能な限り早期に行動を始めることが重要です。


◆ 奨学金や給付型支援制度の活用も視野に

大学進学時には、日本学生支援機構(JASSO)などの奨学金制度や、高等教育の修学支援新制度などの給付型支援もあります。世帯収入に応じて利用できるため、制度の情報収集も資金計画の一環として重要です。


◆ まとめ

教育費は、計画的に備えることで負担を分散できる費用です。「気づいたときには間に合わなかった」という事態を防ぐためにも、早い段階から目標を立てて、無理のない方法でコツコツと積み立てていくことが大切です。

「お金が理由で選択肢が狭まることがないように」——それが、子どもにとっての経済的な後押しであり、親からの最大の贈り物となるのです。