「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載23】

子どもの進学費用と老後資金のバランス

40代から60代にかけての世代にとって、「子どもの進学費用」と「老後資金の準備」は、家計にとって二大支出ともいえる重大テーマです。

「まずは子どもの教育に全力を注ぎたい」と考える親心は当然ですが、老後資金を後回しにすると、いざ退職後に困窮するという“老後破産”のリスクにもつながりかねません。教育と老後、どちらも大切な将来への備え。バランスをどう取るかが、この年代の家計戦略のカギを握ります。


◆ 進学費用の現実的な負担とは?

子どもが高校・大学に進学する時期には、まとまった教育費が一気に発生します。文部科学省の統計によると、大学進学に必要な費用の目安は以下の通りです。

区分初年度費用(入学金+授業料等)4年間合計の目安
国公立大学約82万円約250〜300万円
私立文系大学約110万円約400〜500万円
私立理系大学約140万円約500〜600万円

さらに、自宅外通学や仕送りが発生すれば、年間100万円以上の追加負担が生じることもあります。


◆ 老後資金はいくら必要?

一方で、老後資金は「人生100年時代」に突入した今、ますます重要度を増しています。

  • 総務省の調査では、夫婦2人の老後生活に必要な生活費は月約23万円〜26万円
  • 公的年金だけでは不足する分をまかなうため、60歳時点で2,000万〜3,000万円の備えが理想

▶「教育資金を払い終えたらすぐ老後」では間に合わないケースが増えており、両者を同時並行で備える必要があるのです。


◆ 両立のための3つの資金戦略

▸ ① 目的別に“お金の用途”を仕分ける

  • 教育資金:預貯金、学資保険、奨学金の活用
  • 老後資金:iDeCo、NISA、企業年金制度の把握

▶「子どもにかけるお金」と「将来の自分にかけるお金」は、同じ財布から出すのではなく、目的別に管理するのがポイントです。

▸ ② 老後資金も“先取り”して積み立てる

教育費に気を取られて老後資金がゼロ、という事態を防ぐには、月1〜2万円でもいいので「老後用の積立」を継続することが重要です。iDeCoや新NISAを利用すれば節税効果も得られ、効率的な資産形成が可能です。

▸ ③ 奨学金や支援制度の活用も検討する

子どもが大学進学する際には、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や、「高等教育の修学支援新制度」など返済不要の給付型支援制度も存在します。無理に全額を親が負担せず、子ども自身にも自立の機会を与えることも、将来の教育の一部と言えるでしょう。


◆ 「自分を犠牲にしすぎない」ことが家族全体の幸せにつながる

親が無理をしすぎて老後資金が足りなくなれば、結果的に子どもが将来的にその面倒を見ることになるという「逆仕送り」が発生しかねません。

親の安定した老後は、子どもにとっても安心です。教育と老後、どちらも“未来のための投資”であり、優先順位をつけるのではなく“最適な配分”を考えることが大切です。


◆ まとめ:教育と老後、両立には「仕組み」と「視野の広さ」が必要

家計には限りがあります。その中で両方の資金を準備していくには、「仕組みづくり(自動積立・目的別口座)」「制度の活用(奨学金・NISA・iDeCo)」「冷静な優先順位付け」が鍵となります。

今すぐできることから始めて、「子どもの未来」と「自分たちの老後」どちらも守れる家計戦略を構築していきましょう。