「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載21】

キャリア形成・資産運用(40〜60歳)

40歳を過ぎると、仕事でも家庭でも多くの責任を抱えるようになります。
キャリアの中核を担う一方で、子どもの進学、住宅ローン、親の介護、自身の老後など、「経済的にも精神的にも重みを増すライフステージ」が始まります。

この時期は、収入のピークを迎える一方で、支出も多様化し、家計のコントロールが難しくなる時期でもあります。
同時に、将来のリタイアメントや老後の生活を見据えた「資産形成から資産運用へのシフト」が求められる重要なターニングポイントです。

ここでは、次のような観点から、中年期のキャリアとお金の向き合い方を具体的に解説していきます:

  • キャリアアップと収入の増加戦略
  • 教育費のピークをどう乗り越えるか
  • 資産運用の基本戦略(NISA、iDeCo、不動産など)
  • セカンドライフに向けたリスク管理と貯蓄の再設計
  • 親の介護と自身の介護への備え

「今さらではなく、今だからこそ始める」ことが、これからの20年、30年を左右します。
これまで築いてきたキャリアと資産をどう守り、どう活かしていくか――その答えを一緒に考えていきましょう。

🔹中年期のキャリアアップとお金の向き合い方

この年代では、これまでの蓄積を活かして「どう働くか」「どう守るか」「どう増やすか」が家計の質を大きく左右します。


キャリアアップと収入の増加戦略

40代から60代は、多くの人にとってキャリアの成熟期であり、同時に転機を迎える時期でもあります。社内での昇進・昇給が見込める一方で、組織の再編や役職定年、転職の選択肢が限られてくるなど、今後の働き方をいかに戦略的に構築するかが、収入の安定と向上に直結します。

ここでは、中年期に実現可能なキャリアアップと収入増加のための具体的なアプローチを紹介します。


◆ 「現職で昇進・昇給」を狙う内的戦略

現在の勤務先でキャリアを積み重ねていく場合、重要なのは社内での価値を高めることと、業務の可視化・成果の定量化です。

▸ 意識すべきポイント:

  • 専門スキルの深化(IT、会計、マーケティング、マネジメントなど)
  • 資格取得で信頼性を補強(中小企業診断士、FP、宅建、TOEICなど)
  • プレイングマネージャーから“育成型”リーダーへ

▶ これからは「自分の仕事」だけでなく、「組織にどんな貢献ができるか」を数値で示せる人材が評価されます。


◆ 転職によるキャリア再構築:外的戦略

40代以降でも転職によって年収アップを実現する人は増えています。特に専門職・管理職の転職市場は活発化しており、ミドル層以上を対象とした人材紹介サービスも充実しています。

▸ 成功しやすい転職の条件:

  • 専門性が明確(会計、法務、システム開発など)
  • 前職での実績が定量化できる
  • 転職の「目的」と「提供価値」が一致している

▶ 求人媒体に頼るだけでなく、リファラル(知人紹介)やスカウト型転職サイト(ビズリーチなど)を活用するのも有効です。


◆ 副業・兼業による収入の多角化

政府も「副業・兼業の促進」を掲げており、会社員であっても収入源を複数持つことが現実的な選択肢となってきました。実際に副業収入が毎月3〜5万円でも、年間にすればボーナス1回分以上の家計支援となります。

▸ 人気の副業例

  • スキル販売(ココナラ、クラウドワークス)
  • 資格を活かした講師・コンサル
  • 不動産・株式投資(配当・家賃収入)
  • ブログ・YouTube等の情報発信型副業

▶ 副業は「収入目的」だけでなく、「キャリアの選択肢を広げる」ための実験場としても活用できます。


◆ 自己投資の視点:収入の“種”を育てる

収入を増やす最大の近道は、自分自身の市場価値を高めることです。そのための自己投資は「支出」ではなく「将来への投資」として積極的に捉えましょう。

▸ 有効な自己投資の例

  • スキル習得(語学・IT・マーケ・データ分析など)
  • オンライン学習(Udemy、スタディング、グロービスなど)
  • 資格取得(実務直結型がおすすめ)
  • コミュニティ参加(業界勉強会・セミナー)

▶ 自己投資に月1万円かけたとしても、年収が10万円増えれば1,000%のリターンとも言えます。


◆ まとめ:今こそ「キャリアのオーナーシップ」を持つ時代

会社任せにせず、「自分の働き方と収入を自分で設計する」という意識が、中年期以降のキャリアには不可欠です。将来への不安を減らし、選択肢を広げるためにも、今からでも遅くない一歩を踏み出しましょう。

「収入は与えられるものではなく、つくるもの」
その意識が、これからの20年を変えていきます。