選択的夫婦別姓制度をめぐる議論 ― 否定的立場から見た中立的な考察

2025年6月13日 2025年6月13日

chihaya

日本では、結婚する男女のいずれかが姓を変更し、夫婦で同じ姓を名乗ることが法律で定められています。これに対し、「選択的夫婦別姓」制度の導入を求める声が高まっています。本稿では、否定的な立場を軸にしつつ、賛成派の意見にも目を向けながら、この問題を中立的に考察します。

否定派の多くは、「夫婦が同じ姓を名乗ることによって家族の一体感や絆が育まれる」と主張します。特に子どもを持つ家庭において、両親と子どもの姓が異なることにより、社会的・心理的な違和感やトラブルが生じる可能性を懸念しています。

日本の戸籍制度は「家」を単位にして管理されています。夫婦別姓を導入すると、現行の制度との整合性が取れなくなる可能性があるため、制度設計の大幅な見直しが必要になると指摘されています。

一部の反対論者は、別姓を希望する人は全体の中で少数にすぎず、多くの国民は現行制度に満足していると主張します。そのため、社会全体のルールを変える必要性が薄いという意見です。

選択的夫婦別姓に賛成する人々は、姓の統一を強制する現在の制度が、個人の自由や多様性を尊重していないと考えています。

特に女性の間では、旧姓を仕事上の実名として使ってきた人も多く、結婚によって姓を変えることがキャリアや社会的信用の喪失につながるケースがあります。賛成派は「結婚＝改姓」を強制するのではなく、個人の選択に任せるべきだと主張します。

賛成派は、「選択的」であることを重視しています。つまり、夫婦で同姓を選ぶこともできるし、別姓を選ぶこともできるという柔軟な制度であるため、現行制度の価値観を否定するものではないという立場です。

世界の多くの国では、夫婦が同姓でも別姓でも選べる制度が一般的です。たとえばアメリカ、フランス、韓国などでは選択制が広く普及しています。一方で、家制度が色濃く残る国や文化では、姓の統一が強く求められる傾向もあります。

否定的な意見にも一理あり、家族の一体感や戸籍制度の運用という面での課題は無視できません。一方で、時代の変化に伴い、個人の生き方が多様化する中で、現行制度が現代社会に適応していないという指摘も重く受け止める必要があります。

最も重要なのは、「制度の変更が家族や社会にどのような影響を与えるか」を冷静に検証し、同姓派と別姓派の両方が納得できる妥協点を模索することです。強制ではなく「選択」の幅を広げることで、双方の価値観が共存できる可能性もあります。

選択的夫婦別姓をめぐる議論は、単なる制度の問題ではなく、日本社会の家族観や個人の尊重、多様性にどう向き合うかという本質的な問いを含んでいます。反対・否定的立場に立ちながらも、賛成派の懸念や理想を理解することで、より建設的な議論が進むことを期待します。