「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載15】

貯金と投資の基本(少額投資、NISA、iDeCoの活用)
目次
「毎月コツコツ貯金はしているけれど、このままで将来に備えられるのだろうか?」
そんな不安を抱える若者は少なくありません。収入が限られる大学生や新社会人にとって、将来の資産形成をどうスタートすべきかは大きな課題です。
この項では、貯金と投資の違いと役割の違いを明確にしつつ、少額から始められる資産形成の方法として、NISAやiDeCoの基本を解説します。
◆ 「貯金」と「投資」のちがいを知る
項目 | 貯金 | 投資 |
目的 | 生活防衛・緊急支出 | 資産形成・将来の備え |
安全性 | 高い(元本保証) | 低〜中(リスクあり) |
利回り | ほぼゼロ〜0.001% | 数%〜(運用成果による) |
向いている期間 | 短期(半年〜数年) | 中長期(5〜20年以上) |
まずは、「使う予定のあるお金は貯金」/「使わずに増やしたいお金は投資」という使い分けを意識することが第一歩です。
◆ 少額投資から始める資産形成
投資というと「まとまったお金がないとできない」と思われがちですが、現在では月100円〜1,000円程度から始められる少額投資の環境が整っています。
▸ 投資信託で分散投資
- 1本のファンドで国内外の株や債券に分散投資が可能
- 「NISA」や「iDeCo」の対象として多く採用されている
▸ スマホ証券やロボアドも活用しやすい
- LINE証券、SBI証券、楽天証券など、若者向けのアプリで手軽に始められる
- 初心者向けに「自動で分散・積立」をしてくれるロボアドバイザーも人気(例:ウェルスナビ、THEO)
◆ つみたてNISA(2024年から新NISAへ)
▸ つみたてNISAの特徴(2023年まで)
- 年間40万円までの投資額が、最長20年間「運用益非課税」
- 長期・積立・分散投資に適した投資信託が対象
▸ 新NISA制度(2024年〜)
- つみたて投資枠:年間120万円(非課税期間は無期限)
- 成長投資枠:年間240万円
- 生涯投資上限:1,800万円(うち1,200万円はつみたて投資枠)
- 投資初心者でも、長期的な資産形成が可能
NISAの最大のメリットは、通常約20%かかる税金(運用益に対する)がゼロになること。たとえば100万円の利益が出た場合、通常は約20万円が課税されますが、NISAなら全額非課税になります。
◆ iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で作る「私的年金制度」です。原則60歳まで引き出せませんが、そのぶん税制上の優遇が非常に大きいのが特徴です。
▸ iDeCoの特徴
- 毎月5,000円〜、掛金を運用商品で積み立てる
- 掛金は全額所得控除(節税効果あり)
- 運用益も非課税
- 60歳以降に年金または一時金として受け取り可能
▸ デメリット
- 途中解約不可(60歳まで引き出せない)
- 転職や退職時の手続きが煩雑なことも
就職後に加入するのが一般的ですが、20歳以上の学生や自営業者も加入可能です(条件あり)。収入がある人は、節税と老後資金の積立を兼ねて利用する価値があります。
◆ 初心者のためのステップ3
- 生活費3ヶ月分の現金をまず確保(生活防衛資金)
- 月1,000〜3,000円から、NISAで分散投資を開始
- 収入が安定したら、iDeCoで将来の年金を準備
◆ まとめ:少額でも、早く始めることが最大の資産になる
投資は、「お金持ちのもの」ではありません。むしろ、若いうちから少しずつ始める人ほど、時間を味方につけて大きな差をつけられるのです。複利の力を活かすには、「額より期間」が重要です。
月数千円でも、「自分でお金を増やす力」を持つことは、将来の安心につながります。最初の一歩は小さくてかまいません。お金に働いてもらう習慣を、この時期から始めてみましょう。