「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載12】

大学進学費用の準備(奨学金の賢い活用法とリスク)
目次
大学進学には、入学金・授業料・教科書代・生活費など、さまざまな費用がかかります。国公立大学でも初年度に80万円以上、私立大学では100万円〜150万円を超えるケースも珍しくありません。
こうした進学費用の負担を軽減するため、多くの学生が利用しているのが「奨学金制度」です。適切に活用すれば、経済的に進学を支える大きな力となりますが、一方で返済負担や将来の信用リスクなどもあるため、制度を正しく理解したうえで活用することが重要です。
◆ 奨学金には「返すもの」と「返さなくてよいもの」がある
日本の奨学金制度は大きく分けて以下の2種類があります:
区分 | 代表制度 | 特徴 |
給付型 | 高等教育の修学支援新制度、日本学生支援機構の給付奨学金など | 返済不要。条件(所得制限・成績など)あり |
貸与型 | 日本学生支援機構の第一種・第二種奨学金、大学独自の貸与制度など | 卒業後に返済が必要(無利子または有利子) |
◆ 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度の概要
▸ 第一種奨学金(無利子貸与)
- 成績・家計基準あり(優秀な成績と一定以下の世帯年収)
- 無利子で貸与される
- 月額:自宅通学なら2万円〜5.3万円/自宅外通学なら2万円〜6万円など(選択制)
▸ 第二種奨学金(有利子貸与)
- 成績基準はゆるやかで、幅広い世帯が対象
- 利率は上限3.0%(実際は0.1〜0.5%程度が多い)
- 月額:2万円〜12万円の間で選択可能
▸ 給付型奨学金
- 世帯収入・資産・進学先の要件を満たす学生に対して、返済不要の支援を実施
- 授業料の減免(年最大70万円以上)と併用可能
- 根拠法令:「高等教育の修学支援新制度」※2019年より開始
出典:日本学生支援機構(JASSO)「奨学金制度案内」
URL: https://www.jasso.go.jp/
◆ 奨学金の「賢い活用法」
① 必要な金額だけを借りる
→ 最大限まで借りられるからといってすべてを使うのではなく、「必要な分だけ」を明確にし、無駄な借入を避けることが将来の自分を守る。
② 給付型の制度を優先的に調べる
→ 所得要件が合致する家庭では、給付型奨学金と授業料減免制度の両方が適用される場合もある。事前の情報収集がカギ。
③ 家計と将来収入を踏まえてシミュレーション
→ 卒業後の返済が月にどれくらいかかるか、返済総額がいくらになるのかを進学前に必ずシミュレーションしておく。
◆ 奨学金のリスクと注意点
▸ 将来の負担になることがある
- 月に数万円を借りた場合、卒業時には300万円以上の借金となることも。
- 社会人になってから返済が家計の負担になるケースも多い。
▸ 延滞による信用情報への悪影響
- 返済を滞納すると、信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に登録され、将来的にローンやクレジットカードが作れなくなる可能性あり。
▸ 返済猶予や減額返還制度の存在も知っておく
- 病気や失業などにより返済が困難になった場合は、猶予申請や月額減額の制度がある(要申請)。
◆ 保護者も「奨学金は借金」という意識を持とう
奨学金は非常に便利な制度ですが、借金であることには変わりありません。親の立場としては、奨学金に頼る割合をできるだけ減らせるよう、中高生のうちから進学費用を積み立てておくことが望ましいです。
また、奨学金を利用する子どもには、「将来の自分が返済するもの」であることを理解させる教育も重要です。大学在学中に、少額でもアルバイト収入から貯金する習慣をつけておくと、卒業後の返済計画にも余裕が生まれます。
◆ まとめ
奨学金は、経済的に厳しい家庭でも進学の夢を叶えられる強力なサポート制度です。しかし、無計画な借入は、将来の重荷になるリスクも伴います。
給付型制度を優先的に活用し、必要最小限の貸与にとどめ、返済計画を事前に立てておくことで、奨学金は「負担」ではなく「未来への投資」になります。
「借りる」だけで終わらず、「返す」未来まで見据えたファイナンシャル・プランニングを心がけましょう。