「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載8】

習い事や塾にかける費用の考え方

子どもが成長するにつれて、「そろそろ習い事を始めさせようか」「受験に備えて塾に通わせたい」といった声が多くなってきます。ピアノ、水泳、英会話、学習塾……選択肢が豊富な一方で、どこまでお金をかけるべきか迷うのも、親としての正直な気持ちではないでしょうか。

この項では、実際にかかる費用の実態と、家計の中でどう考えるべきかという視点をお伝えします。


◆ 習い事や塾にかける平均的な費用

文部科学省「子供の学習費調査(令和3年度)」によると、学校外活動費(習い事や塾など)の平均年間支出は以下の通りです。

教育段階公立(年間)私立(年間)
小学校約17万7,000円約61万7,000円
中学校約27万2,000円約31万5,000円
高校(全日制)約18万3,000円約22万7,000円

特に中学〜高校時代にかけて塾代が大きく増加し、家庭の教育費の中でも大きなウェイトを占めるようになります。都市部では年間で100万円を超えるケースも珍しくありません。


◆ 習い事の目的を明確にする

習い事や塾にお金をかける際、まず大切なのは「目的を明確にすること」です。

▸ 習い事の場合:

  • 技能の習得(ピアノ、スイミングなど)
  • 情操教育や社交性の育成(武道、絵画、英語など)
  • 体力づくり、健康促進

▸ 塾の場合:

  • 学校の授業の補完
  • 中学・高校・大学受験対策
  • 苦手科目の克服や先取り学習

目的を明確にしないまま、周囲に合わせて始めてしまうと、「通っているけれど成果が出ない」「本人が嫌がって辞めたがる」といった状況に陥り、費用対効果が得られないまま出費だけがかさむことになりかねません。


◆ 家計とのバランスを意識する

教育費は「未来への投資」と言われる一方で*現在の家計を圧迫するような出費は長続きしません。家計の中で無理なく支出できる範囲を決めておくことが大切です。

▸ 目安としての教育費比率

一般的に、教育費の家計比率は手取り収入の10〜15%以内が理想とされています。たとえば、月収手取り30万円の家庭であれば、月3〜4.5万円以内が目安です。

収入に対して教育費の割合が大きすぎると、貯蓄や生活費に支障をきたす恐れがあります。


◆ 無理のない費用のかけ方の工夫

以下のような工夫を取り入れることで、無理なく教育投資を続けることができます。

▸ 複数の習い事を同時に始めない

→ まずは1つに絞り、子どもの興味や継続力を見てから追加を検討。

▸ 費用対効果を定期的に見直す

→ 習い事や塾の内容が目的に合っているか、成果が出ているかを3〜6ヶ月ごとに確認。

▸ オンライン学習を活用する

→ スマイルゼミ、スタディサプリ、YouTubeなど、月額1,000〜2,000円で質の高い教育を受けられるサービスも。

▸ 自治体や学校主催の講座を利用する

→ 市民講座、放課後子ども教室など、公的機関が提供する無料・低額の学習機会も活用価値大。


◆ 習い事・塾は「かけた金額」ではなく「かけた質」

教育費でありがちな落とし穴は、「高い=良い」「たくさん通わせる=良い」と思ってしまうことです。しかし、本当に重要なのは、子どもが楽しみながら、身になる経験を積んでいるかどうかです。

本人の成長段階や興味関心に合わせた教育投資こそが、長い目で見てもっとも効果的かつ無駄のないお金の使い方につながります。


◆ まとめ

習い事や塾は、子どもの将来にとって大きな意味を持つ「自己投資」です。しかし、家計の現実も踏まえながら、目的を明確にし、定期的に見直すことがポイントです。

「今しかできない体験に投資する」という視点と、「無理のない家計管理」というバランスを意識しながら、子どもの才能や興味を伸ばす教育を考えていきましょう。