「ゆりかごから墓場まで」— 人生の各ステージのファイナンシャル・プランニング【連載3】

出産費用と公的支援制度の活用法

子どもが生まれるとなると、まず気になるのが「出産にいくらかかるのか?」ということではないでしょうか。出産は人生の大きな喜びであると同時に、家計にも大きなインパクトを与えるイベントです。しかし、国や自治体の支援制度をうまく活用することで、その負担を大きく軽減することができます。

■ 出産費用の平均は?

出産にかかる費用は、病院の種類や地域によって異なりますが、全国平均で約50万円前後とされています(厚生労働省「出産育児一時金に関する調査」より)。これには、分娩費用、入院費、初期検査費用などが含まれます。

最近では個室の利用や無痛分娩など、プラスアルファの費用がかかるケースも増えていますが、一定の公的支援を活用すれば、実質的な自己負担額を大きく抑えることが可能です。


■ 出産育児一時金

まず活用したいのが、健康保険から支給される「出産育児一時金」です。2023年4月以降、この支給額は1児につき50万円(産科医療補償制度加入の医療機関で出産した場合)に引き上げられました。

この制度は、健康保険に加入している人(被保険者または被扶養者)であれば誰でも利用でき、出産費用の直接支払い制度を使えば、病院側が健康保険から費用を直接受け取るため、実際に現金を用意する負担が軽くなります。

▸ 対象となる出産

  • 妊娠85日(12週)以上での出産(早産・流産・死産も対象)
  • 健康保険の被保険者本人または扶養家族

■ 児童手当

出産後にぜひ申請しておきたいのが、「児童手当」です。これは、0歳から中学卒業(15歳到達後の最初の3月末)までの子どもを対象に支給される、継続的な公的支援です。

2024年からの改正により、一部支給内容が変更されましたが、基本的な支給額は以下の通りです。

▸ 支給額(月額)

  • 0〜3歳未満:15,000円
  • 3歳〜小学校修了前(第1・第2子):10,000円
  • 3歳〜小学校修了前(第3子以降):15,000円
  • 中学生:10,000円

※所得制限内の家庭の場合。所得上限を超えると支給されない場合があります。

▸ 申請のタイミング

出生届の提出後、速やかに市区町村の窓口で申請が必要です。申請が遅れると、原則として遅れた月分はもらえませんので、なるべく早く手続きを行いましょう。


■ その他の支援制度

出産・子育て世帯を支援する制度は他にもあります。以下は一部の例です。

  • 妊婦健康診査の公費助成:多くの自治体では14回程度の妊婦健診費用を公費で助成しています。
  • 育児休業給付金:雇用保険に加入している場合、育児休業中も一定の給付金(最大67%→50%)が支給されます。
  • 乳幼児医療費助成制度:多くの自治体では、乳幼児の医療費が無料または低額になります(対象年齢・内容は地域によって異なります)。

■ 支援制度は「申請しなければもらえない」

多くの制度は、自動的に給付されるものではなく、「自分で申請すること」が必要です。
出産前後は何かと忙しく、体力的にも精神的にも大変な時期ですが、こうした公的支援制度を知っておくことで、経済的な負担を軽減し、安心して育児に専念することができます。


■ まとめ

出産は大きな喜びとともに、家計にも大きな変化をもたらすライフイベントです。しかし、国や自治体が用意している支援制度を活用することで、実質的な出費を大きく抑えることが可能です。

出産育児一時金や児童手当などは、必ずチェックして早めに申請手続きを行いましょう。「知っているか知らないか」で、将来の家計に大きな差が生まれます。

この時期に得られる支援は、今後のライフプランの土台ともなります。まずは制度を正しく理解し、しっかりと活用することから、家族のファイナンシャル・プランニングを始めていきましょう。


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